日本外交のカタチ~麻生太郎・安倍晋三はこうして諸外国と渡り合った~

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 麻生太郎さんは、外務大臣のときにカンボジアに行って、こんなことを言われたという。「カンボジアは新しい国だから、いろいろなことをどう進めていいか分からない」。カンボジアの人たちが悩んでいることの大半は、実は日本が復興するときに同じように悩んだことだったから、麻生さんは「日本はそれらを全部経験してきました。ですからその経験をお教えしましょう」と言った。

 するとカンボジアの人たちは「いや、もう既に、日本から来て教えてくれている日本人女性がいます。その女性が、カンボジアの民法や民事訴訟法などをすべてつくってくれています」と言ったという。

 親族関係や争いごとの解決方法などを定めた民法は、その国そのものと言っても過言ではない。それを、日本人がつくっているというのだ。おそらく日本人がつくったものの中で、カンボジアの人たちが気に入ったものだけを採用するのだろうが、それは「カンボジアが日本になる」というようなことである。日本人は、カンボジアをつくってあげているのだ。

 新興国は、とにかく日本に学びたい。文化を教えてくれ、いろいろなことをすべて教えてくれという状態になっているそうだ。

麻生元外相の「自由と繁栄の弧」はものすごい思想攻勢

 安倍晋三さんと麻生さんの意見が一致して、二人で取り組んだ「価値の外交」という概念がある。日本から始まって、ベトナムを回って、シンガポールを通って、インド洋へ出て、アラブ諸国に至るという、“お月様”みたいな弧があって、それらの国々はみんな経済がうまくいっていて、繁栄している。その繁栄の奥には「価値」があるということである。

 価値とは、例えば「自由は尊い」ということ。「民主主義は尊い」「言論の自由は尊い」「家族仲良く暮らそう」「相手を侵略しない」「軍事力には金をかけない」といったことで、それらの価値観が各国において共通していて、みんな繁栄している。

 麻生さんはその「繁栄の弧」の上にある国々を回って、「今の価値観でもっと一緒にやろう」という話をして大成功した。そこで、それを「自由と繁栄の弧」と発表した。しかし、日本ではそのことを誰も褒めていない。

 中国やロシアはそれを脅威に思っているはずだ。「自由と繁栄の弧」に囲まれたら勝ち目がない。中国やロシアには、国内にそういう価値がまったくないのだから。

 国内にないものを今からつくろうと言われても困る。もしつくったら、共産党政権はなくなってしまう。そうした意味で、麻生さんが発表した「自由と繁栄の弧」とは、実はものすごい思想攻勢なのである。

中国は完全に安倍外交に屈していた

 そういうことをマスコミは書かないから、日本人は気がついていない。ところが、在日元中国人評論家の石平さんはそれを書いた。石平さんによれば、北京に行ってみると、もうみんな「日本に負けた。完全に日本にグリップされた。我々はそれに対して戦う手段がない」と言っているそうだ。

 それを聞いた麻生さんは、「たしかに、外務大臣として北京へ行ったとき、中国の胡錦濤国家主席はもう困り果てていた。本当に立ち往生していた」と言っていた。

 「これからいったい誰が総裁になるのでしょうか、やはり安倍晋三がなるのでしょうか」「おそらくなるでしょう」「では安倍晋三に対して、我が中国はどうすればいいでしょうか。教えてください」――というやり取りがあったそうだ。そこで、安倍晋三さんが中国へ来たとき「まずは全面屈服してください」と言ったら、本当にそうしたらしい。

 それなのに日本の新聞やテレビは、「北京詣をした」と報道した。「安倍はさっそく北京詣をした」というふうに、悪口ばかり言う。しかし、中国側はもう反日的なことをまったくしなくなって、ただ静観しているだけであった。あれは完全に安倍外交に屈服していたのだろう。

 そういう経緯を知っていた石平さんは、安倍政権が終わったとき、「せっかく中国をあそこまで追い詰めたのに、辞めてしまって残念だ」と言っていた。それを中国人の石平さんが言うのは変だと思って聞いてみると、「実は中国国民は大変残念に思っています。あのまま安倍外交が続いて中国共産党がなくなってくれるのが、13億人の中国国民のためです。日本が助けてくれると思っていたのに残念です」と語った。

 わたしはうなってしまった。日本の評論家でそこまで考えている人はいるのだろうか。それくらいの目で世界を見てほしいものだ。

日本の経験がこれからの世界を動かす

自由と繁栄の弧 (幻冬舎文庫)
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