きっとみなさんはペンで書いた文字は燃やさない限り半永久的に消えないと思っていませんか?
実はそんなことはないんですよ。ペンで書いた文字は意外と消えてしまいやすいんです。
もっとも消えやすいのは、消せるボールペンで大ヒットしているパイロットの「フリクション」です。
これは熱によってインクを透明化させる原理で消せるので、ちょっと熱が発生するところに置いておくと紙が摂氏60度以上になるとインクがすっかり消えてしまうんですね。知ってましたか?
真夏の屋外とかに放置するだけで、すっかり白紙に戻ってしまう可能性も高いわけです。
しかしインクが消えてしまってもマイナス10度まで冷やすと、また色が戻りますので、ご安心を。
とはいえフリクションのような特殊なインクではなくてもボールペンは消えやすい筆記具なんです。
消しゴムでは消せないからといって、消えないわけじゃないんですね。
水性やゲルインクのタイプは水で滲んで判読不能になるくらいインクが流れてしまうことも多いし、
油性であっても日光(紫外線)に数日間さらすだけで、すっかり色が褪せてきてしまいます。
文具会社では耐水性、耐光性を高めようと努力してはいるのですが、なかなか完璧にはなりません。
そういうわけで、ボールペンで書いた文字というのは、よほどしっかり管理しないと
100年はおろか数十年でも判読不能になってしまうほどなのです。
もちろん故意に日光にさらし続ければ判読不能になるまでに1ヶ月とかからないでしょう。
なぜ日光の紫外線で消えてしまうのかというと、インクの種類が染料系と呼ばれるものだからです。
インクには油性、水性の区別がありますが、それとは別に染料系インク、顔料系インクがあるのです。
染料系インクというのは科学的に作られた水あるいは油に溶けるものです。
通常はいくつもの石油を主体とした原料を混ぜて作られるので発色も鮮やかで色数も多くできます。
対して顔料系インクというのは鉱物など天然原料を使用していて水にも油にも溶けません。
細かく粉砕して粒子状にしてインクに混ぜて使うのですが、科学的に合成した色ではないので
染料系インクよりも退色しにくいのが特徴です。
万年筆のインクでは昔ながらのブルーブラックだけが顔料系インクになっています。
これはインクの中に酸化鉄が含まれていて、これが時間経過による酸化反応で黒くなるのを利用しています。
ところが書くときはまだ無色透明のため、それでは不便だということで青い染料系インクで
あらかじめ色をつけてあるので、書いているときは青、やがて染料系インクの青が退色していってもやがて顔料系インクの酸化鉄が黒く変色するからブルーブラックなんですね。
顔料系インクではないのですが、鉛筆なども天然に存在する黒鉛ですので変色しません。
ただし紙の上に黒鉛の粒子が乗っているだけなので、定着状態が不安定なため
掠れて消えやすいし、その原理を利用して消しゴムが作られたわけです。
もっとも長く文字を残すことを考えたら、やはり墨でしょうね。
日本でも大昔の竹簡に書かれた文字が判別できたりしますよね。
これはボールペンやフェルトペンではこうはなかなかいかないんですよ。
墨の黒さは炭素そのものの色であって、安定した物質でもありますから、まったく変色しないし
ニカワによって炭素の粒子が紙に染みこむので、鉛筆とはちがって摩擦にも強いのです。
デジタルの文字情報も複製が容易なだけで、実はすごく消えてしまいやすい媒体であることは
みなさんもご存じのことでしょうから、もしもあなたのメモや生原稿を後世に残したいのならば
墨と硯を使って筆書きにすることをおすすめしますよ。
まあ、半分冗談ですが、大切なメモを不注意で消してしまわないよう、
筆記具の種類を選ぶときやその後の管理には気をつけてください。
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