死なないで、逃げて逃げて
劇作家・鴻上尚史さん
あなたが今、いじめられているのなら、今日、学校に行かなくていいのです。
あなたに、まず、してほしいのは、学校から逃げることです。逃げて、逃げて、とことん逃げ続けることです。学校に行かない自分をせめる必要はありません。大人だって、会社がいやになったら、会社から逃げているのです。
次にあなたにしてほしいのは、絶対に死なないことです。
そのために、自分がどんなにひどくいじめられているか、周りにアピールしましょう。思い切って、「遺書」を書き、台所のテーブルにおいて、外出しましょう。学校に行かず、1日ブラブラして、大人に心配をかけましょう。そして、死にきれなかったと家にもどるのです。 それでも、あなたの親があなたを無視するのなら、学校あてに送りましょう。あなたをいじめている人の名前と、あなたの名前を書いて送るのです。
はずかしがることはありません。その学校から、ちゃんと逃げるために、「遺書」を送るのです。
死んでも、安らぎはありません。死んでも、いじめたやつらは、絶対に反省しません。
あなたは、「遺書」を書くことで、死なないで逃げるのです。
だいじょうぶ。この世の中は、あなたが思うより、ずっと広いのです。
あなたが安心して生活できる場所が、ぜったいにあります。それは、小さな村か南の島かもしれませんが、きっとあります。
僕は、南の島でなんとか生きのびた小学生を何人も見てきました。
どうか、勇気を持って逃げてください。
(朝日新聞2006年11月17日掲載)
いじめたとされる生徒の母親は、昨年十一月にあった保護者会で「アンケートは周りの目撃情報を基に全く関係ない人間が推測で書いた」と主張。訴訟では、いじめたとされる生徒三人の保護者はいずれも「いじめはなかった」として、市と同様に請求棄却を求めている。
「先生に相談したけど、何もしてくれなかった」、「一度、先生は注意したけど、そのあとは一緒に笑っていた」、「先生も見て見ぬふり」などと、教師がいじめを把握していながら、放置していた可能性を示す回答が、少なくとも14人分あったことがわかった。
教育委員会側は、男子生徒がいじめを受けていた事実は認めつつも、いじめと自殺との因果関係はわからないとし、裁判で争う姿勢を見せている。
市の教育委員会の調査で、この生徒がいじめを受けていたことが分かり、生徒の父親は「息子が同級生から暴行を受けていた」として去年10月から12月にかけて大津警察署に被害届を提出しようとしました。
しかし、大津署は3回にわたって受理を拒否したということです。
鴻上尚史の言葉は本当だという事が今回の事件で証明されてしまった。いじめの加害者、教師、教育委員会、警察… 誰も反省していない。彼が死んでも、彼や遺族のためには何にもならなかった。加害者はこの先、笑って生きていく。遺族には悲しみと後悔の念しか残らない。
もしイジメを受けている子供がいたら、絶対に「逃げて」「生きて」ほしい。死にさえしなければ、いつかやり直せる日が来るチャンスを掴める。
この世間は、人の痛みを感じられない鈍感で冷酷な人間が生きやすいようにできてしまっている。悲しい事だ(´・ω・`)。