警察の山岳救助隊の活躍がかっこいい!

警察の山岳救助隊の活躍がかっこいい!

 山岳雑誌のヤマケイが、今年の夏の遭難状況を振り返るという特集企画を組んでいるのですが、凄まじい救出劇を6頁に渡ってレポートしています。通常、単独行の遭難事故なんて、メディアはベタもベタ扱いですから、ましてや助かったケースの詳細が明らかになる機会はほとんど無いのですが、これは凄まじいレポートです。

 遭難者は、山登りを始めて一年未満の初心者。30歳。百名山登山に出かけると母親に言い残して姿を消すんです。母親は、「秩父の百名山」と記憶しているだけで、どの山にどういうルートで登ったのか全く解らない。

 余談ですが、「百名山」て本当に罪作りな企画ですよね。この山を制覇するためにいったい何百人の登山者が犠牲になったことか。

 それで、その時、30歳の男性に何が起こっていたのか? 日帰り予定だった彼は、全くの軽装、食料も無し、もちろん登山計画書も無し、20年前のガイドブックを頼りに下山していた彼は、ルートを間違えて、沢の中へと入っていくんです。そこで足を滑らせて、左足首(臑の後ろの2本)を開放骨折してしまう。開放骨折ですよ。折れた骨が皮膚を破って飛び出している状態。
 彼はそこからなんと14日間耐え凌いで救出される
んです。

 埼玉県警山岳救助隊は、翌日深夜の「息子が帰ってこない」という母親からの捜索依頼を受けて動き始めるんだけど、最初の手がかりは、「これから登る山には鎖場がある」という母親宛のメール一本だけなんですよ。
 埼玉県警山岳救助隊は、県内にある秩父山系にある四つの百名山から一つに絞り、さらにそこから先を、まさに犯罪の捜査手法を使って、遭難者の足取りを追い始める。遭難者が出発前にネカフェで朝を待ったことを突き止めて、たぶんそのネットの履歴から、登山ルート等を割り出して、捜索に入るわけです。
 所が一週間探しても発見できない。普通、一週間も警察が山には入って結果が出せなければ、その辺りで捜索は打ち切られる。でも今回、埼玉県警山岳救助隊は諦めないんですよ。それは「両神山での遭難は、探せば必ず出て来る」という信念を隊長が持っていたから。
 それで、虱潰しにルートを潰して捜索を続行するわけですね。恐らく、捜索を開始してから、11日か12日目辺りに、沢に引っ掛かっている遭難者のザックを地元署の隊員二名が発見する。遭難者はすぐ近くにいた。

 所が、この奇跡のドラマには第二幕があるんです。遭難者を発見したのは午後3時前後。すぐヘリを呼ぶんだけど、土砂降りの雨になってヘリは引き返すんです。
 その内、沢の水が濁って来て、あっという間に濁流になる。遭難者はもとより、捜索隊員も危ない。やがて到着した増援二名が加わり、遭難者をストレッチャーに確保して、ほとんど垂直の急峻な崖を上へ上へと引っ張り上げるんです。対岸からその模様を撮った写真だか据え置きのビデオからのカットが掲載されていますが、まさに間一髪です。上へ上へと引っ張り上げられる遭難者と救助隊員を濁流の水位が追いかけるように上がっていく。
 だからこの遭難事故は、14日間耐え抜いた遭難者の発見が、もう20分遅れていたら、絶対に助からなかっただろうケースなんです。
 開放骨折で、14日間手当もせずに生きられるものなのか? ということも驚くんですけれど、ただやはり酷かったらしくて、この記事が書かれた時点でも、遭難者はICUからも出られずに手術を繰り返しているそうです。

 記事中には、日帰り予定にしては装備はちゃんとしていたと書いてあるんだけど、そもそも、山登りを始めて一年未満で百名山に単独行とか止めてくれないかと思うわけですが。それにしても偉いのは、埼玉県警救助隊。
 一週間捜索したあと、捜索隊の規模を縮小して、山を挟む地元警察署二箇所から数名ずつ出る程度になるんですね。
 でも、部隊としては、当てずっぽうで探しているわけではなく、登山者の心理を読み、推定できるルートを一つ一つ潰して行って、遭難者に辿り付くんです。

 私は普段、警察の捜査や取り調べに関して厳しい批判をする人間ですが、警察の日常の大半は、捜査ではなく、新聞記事にはならないような街の治安の維持や人命救助だったりするわけです。
 この男性に起こったことは奇跡だったかも知れないけれど、その奇跡を起こした人々は、日頃の鍛錬と経験をパーフェクトに発揮し、使命感を持って人命救助という崇高な目的を成し遂げた。その努力に最大の敬意を表したいと思います。

 ちなみに、結果として彼が助かった理由は、実は骨折のお陰でもあるんですよね。骨折のせいで、ほとんど動けなかった。本人はそれでも這うようにして移動したつもりでいたらしいんだけど、実は骨折した地点からほとんど動いていないんですよ。それで、食料は無かったけれど、体力の消耗を最低限に抑えられたことが、彼を救ったとも言えます。

 まだ店頭にありますので、ぜひヤマケイ11月号を読んで下さい。私からのアドバイスは、どうしても単独行をしたいのであれば、遭難することを前提とした装備と心構えで山に挑みましょう。その備えが結局は遭難を防ぐことに繋がりますから。

 2週間、マンパワーを投じて救った命はたった一つ。県民が誉めてくれるわけでも、どこかのテレビ局がミニ番組を作ってくれるわけでもない。
 でも、もし私が家族で埼玉県内の山に登る機会があったら、息子達に、皆さんの執念と活躍を語って聞かせましょう。たった一人の遭難者を救うために、諦めない男たちがいることを。
 いざという時にも、必ず警察の救助隊が助けに来てくれる。だから決して諦めるなと。

凄いぞ! 埼玉県警山岳救助隊

正に山岳救助のプロフェッショナル…ッ!( `・ω・´)

こんな警察官にだったら抱かれてもいい(*´Д`*)

レスキュー最前線 長野県警察山岳遭難救助隊
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岳 18
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